養護教諭の専門性とは?養護教諭は、「特別な先生」です。

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養護教諭を目指す方へ
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この記事をまとめると

養護教諭の専門性はあいまいで、教育学、看護学、心理学、福祉学、健康学が重なったところです。この記事は、元養護教諭としての経験をもとに書かれています。担任の先生とは違う「特別」な養護教諭について、よりイメージしやすくなるようにまとめています。

保健室の先生の仕事内容や、保健室の先生になるにはどうすればよいかについてはなんとなくわかったけれど、まだまだイメージしづらいという部分がたくさんあるかと思います。

この記事では、「養護教諭の実際のところ」に焦点を当て、養護教諭の専門性と特質を踏まえ、養護教諭のやりがいやむずかしさについて説明しています。

「養護教諭の実際のところ」がわかれば、養護教諭についての理解がより深まるはずです。

なお、記事内容に関するご質問は、お問い合わせフォームからご連絡ください。

養護教諭の専門性

白衣を着た男の子

養護教諭は教諭であると同時に、学校における心と体の健康の専門家です。

養護教諭の免許状はいろいろな学部で取得できることから、教育学、看護学、心理学、福祉学、健康学が重なったところが、養護教諭の専門性といえます。

○○学をずらりと並べてしまうと、養護教諭の専門性はあいまいに感じられてしまうかもしれませんが、あいまいであることは悪いことではありません。

むしろそのあいまいさこそが、養護教諭の専門性とも言えます。

教育を基礎・基本としながら、子どもに対して様々なアプローチをします。


参考として、養護教諭の職務に関連する法規・答申をまとめました。

詳しくは、文部科学省ホームページ「養護教諭の職務内容等について」をご覧ください。

養護教諭の職務に関連する法規・答申

養護教諭は、児童の養護をつかさどる。

学校教育法 第37条⑫ – 文部科学省

養護教諭は、専門的立場からすべての児童・生徒の保健及び環境衛生の実態を的確に把握し、疾病や情緒障害、体力、栄養に関する問題等、心身の健康に問題を持つ児童生徒の指導に当たり、また、健康な児童生徒についても健康の増進に関する指導のみならず、一般教員の行う日常の教育活動にも積極的に協力する役割を持つものである。

保健体育審議会答申(昭和47年) – 文部科学省

養護教諭は、児童生徒の身体的不調の背景に、いじめなどの心の健康問題がかかわっていること等のサインにいち早く気付くことのできる立場にあり、養護教諭のヘルスカウンセリング(健康相談活動)が一層重要な役割を持ってきている。養護教諭の行うヘルスカウンセリングは、養護教諭の職務の特質や保健室の機能を十分生かし、児童生徒の様々な訴えに対して、(中略)心や体の両面への対応を行う健康相談活動である。(中略)養護教諭については、現代的課題など近年の問題状況の変化に伴い、健康診断、保健指導、救急処置などの従来の職務に加えて、専門性と保健室の機能を最大限に生かして、心の健康問題にも対応した健康の保持増進を実践できる資質の向上を図る必要がある。

保健体育審議会答申(平成9年 – 文部科学省

養護教諭の特質

カラフルな色鉛筆

養護教諭の特質について説明します。

養護教諭は、「特別な先生」

養護教諭は、特別な先生です。

「特別」というと、「周りとは違う」という意味で、養護教諭と関わる子どもに対してネガティブな印象で捉えられる場合があるかもしれません。

しかし、「特別」であることは決して悪いことでなく、子どもに必要なものなのです。

救急処置を通じて、子どもに触れる

養護教諭は、救急処置の際に子どもに触れます。

たとえば、絆創膏を貼るとき、包帯を巻くとき、お腹が痛いと言って来室した子どもを触診するとき、といった具合です。

養護教諭は子どもに触れる機会が多くありますが、これは学校の中でも養護教諭だけの特徴です。

クラス(学級)を持たない

養護教諭は、担任の先生と違って、クラスを持ちません。

小学校であれば、1年生から6年生、中学校や高校であれば、1年生から3年生というように、すべての学年の子どもと関わります。

クラスを持たないことで、基本的には授業などで子どもを評価することがありません。

時間割の境界線がない

養護教諭は、授業や休み時間といった時間割の境界線がありません。

いつ、子どもがけがや病気をするかはわからないものです。

仕事内容が広範囲にわたる

養護教諭の仕事の代表例として、救急処置や健康診断、保健教育が挙げられますが、これはほんの一部です。

養護教諭の仕事は非常に広範囲にわたり、その内容は、日によって、時期によって、学校によって、異なります。

他にも、いろいろな学校には誰か担当するか決まっていない仕事もたくさんありますが、そういった仕事も養護教諭の仕事かもしれません。

たとえば、「不登校の子どもを家まで迎えに行く」のも、「担任の先生の授業プリントの印刷をお手伝いする」のも、「職員室で電話対応をする」のも、「うさぎにえさをやる」のも、養護教諭の仕事かもしれません。

言い換えると、そのときそのとき求められていることをするのが、養護教諭の仕事です。

養護教諭は、なんでも屋さんかもしれませんね。

ちなみに、養護教諭は「保健室の先生って、普段どんなことをしているの?」と聞かれて答えにくいのは、仕事内容が広範囲にわたることが原因かもしれません。

保健室は、「特別な空間」

養護教諭は「保健室の先生」と呼ばれることが多いように、養護教諭の仕事の拠点は保健室です。

養護教諭が特別な先生であるならば、保健室は特別な空間です。

保健室は、休み時間や授業中など、時間を問わずいつでも利用することができ、学年やクラスを問わず、誰でも利用することができます。

また、保健室は、けがや病気をしたときにだけ利用するものではなく、様々な用途で利用されます。

恋愛や、友達や家族の人間関係、進路のことで相談に来る子どももいます。

給食後に食べたものを吐いてしまったり、トイレに間に合わず、おもらしをしてしまったりして、誰にも言えずに保健室に来る子どももいます。

池に落ちて、服がずぶ濡れの状態で、保健室の前で呆然と立ち尽くす子どももいます。

特に理由はなく、「遊びに来たよ~」と言ってふらりと保健室に来る子どももいます。

子どもはいろいろな思いあって保健室に来室するため、保健室には様々な機能があります。


養護教諭や保健室が特別であることで、担任の先生とは異なる視点で、子どもを多面的・多角的に捉えることができます。

養護教諭を一言で表すと?

手と手

職場におけるポジションは、チーム全体を見渡すマネージャー型、チームを引っ張っていくプレイヤー型、チームを支えるサポーター型の3つのタイプに分けられます。

学校では、管理職をマネージャー型、担任の先生をプレイヤー型、養護教諭をサポーター役と表現することができます。

独自の考え方ですが、私は養護教諭を「お湯」や「大木」のような存在であるという考えに辿り着きました。

養護教諭は、「お湯」のような存在

私は、養護教諭を一言で表すと、「お湯」のような存在であると考えます。

私がこのように考えるのは、養護教諭は、人と人との間に入ることが多いからです。

子ども同士で喧嘩をしたときは、子どもと子どもの間に入ります。

健康診断の日程の調整をするときは、先生と先生の間に入ります。

カウンセリングに同席するなど、子どもと先生との間に入ることもあります。

人をじゃがいもにたとえるとします(他に例が思いつかなかったのですが、適当な形と大きさ、水に沈む、食べ物という条件で、じゃがいもにしました)。

じゃがいもの形や大きさはそれぞれ違うので、じゃがいも同士がぴったりとくっつくことはありません。

また、硬くてそのままでは食べることはできません。

しかし、お湯の中に入れるとどうでしょう。

二つのじゃがいもの隙間はなくなり、やわらかくなり、味付けをすると、さらにおいしくなりますよね。

人と人との関わりの中で、その人たちに心の隙間ができてしまったとき(またはできそうなとき)、養護教諭はお湯のように、その隙間に形を合わせてするりと入り込みます。

そして全体を温かく包み込み、人の緊張をほぐします。

学校は、同じ志を持って、チームで動くものです。

一人ひとりが独立するのではなく、みんなが一つになって力を合わせることで、よりいいものが生まれます。

また、嬉しいことに、私が養護教諭として働いていたころ、「保健室にいるとなんか落ち着く」と言ってくれる子どもがいました。

落ち込んだときや疲れたとき、お湯の張ったお風呂につかると、ほっとしますよね。

養護教諭がお湯だとするならば、保健室は温泉のようなものかもしれません。

養護教諭は、「大木」のような存在

また、私は、養護教諭を「大木」のような存在であるとも考えます。

太い根っこは土の中に広がり、青々とした葉は木陰を作り、長く伸びた枝は鳥の止まり木になります。

子どもを支え、守り、休める養護教諭は、「大木」という言葉がぴったりなのではないかと思います。

子どもは、保健室を一時的な避難場所として立ち寄り、エネルギーが補給できたら、また飛び立っていく、そんなイメージです。


私は、養護教諭は「安心」を体現したような人だと考えます。

そして、保健室は子どもにとって「安心」そのものです。

私自身、子どもにとって安心を与えられる養護教諭を目指し、子どもが安心できる保健室作りを心がけていました。

養護教諭のやりがい

カラフルな絵の具

養護教諭のやりがいについて説明します。

一人ひとりにあった支援ができること

一人ひとりにあった支援ができることは、養護教諭のやりがいの一つです。

子どもの「元気になったよ」の声

養護教諭にとって、子どもの「元気になったよ」という声ほど嬉しいものはありません。

保健室には、毎日様々な理由で子どもたちが来室しますが、多くの場合は体や心が弱ったときに来室します。

私が養護教諭として働いていた頃、お母さんと離れるのが不安で、登校してすぐに保健室に来ては、泣いてばかりの1年生の子どもがいました。

とても心配していたのですが、時が経つにつれ、徐々に来室は減っていきました。

そしてその子が2年生になる少し前、久しぶりに保健室に来たとき、「先生、私、もう元気だよ!」と言った子どもに、どんなに力強さを感じたことでしょう…。

元気のなかった子どもが、運動場で友達と走り回って遊んでいる姿や、学級で元気に発表している姿を見ると、子どもの成長を感じていました。

養護教諭は子どもの弱った姿を見る機会がどうしても多くなりますが、その分、「元気になったよ」という子どもの声は、嬉しいものではないでしょうか。

独自性を発揮できること

独自性を発揮できることも、養護教諭の魅力です。

たとえば、養護教諭とセットである保健室の運営は、養護教諭の考え方が強く反映されます。

いわば保健室は、養護教諭の分身です。

保健室が子どもたちにとって居心地のよい場所となるように、養護教諭の取り組みは様々です。

私は、働いていた学校で、ジブリやディズニーのオルゴール音楽を流すようにしていましたが、子どもからとても好評でした。


また、保健関係の掲示物も、子どもの実態に応じてとても工夫されて作られています(インスタグラムで「#保健室掲示物」などと調べてみると、養護教諭の取り組みが見られます)。

このように、自分の個性や強みを生かして、あなただけの保健室を作ることができます。

養護教諭の仕事のむずかしさ

うつむく女性

養護教諭は、学校に一人または二人の少数職種であるため、養護教諭ならではの悩みもあります。

基本的に一人で行動することが多い養護教諭は、自分のペースで仕事ができるという魅力がある一方で、学校において孤独を感じやすい立場にあります。

これは、養護教諭の特質で説明しましたが、養護教諭や保健室が「特別」であるがゆえに、他の先生から理解を得にくいからです。

たとえば、養護教諭が主体となって取り組む就学時健康診断という保健行事があります。

就学時健康診断とは、小学校に入学予定の子どもを対象とした健康診断で、自治体によっては学校で行われます。

就学時健康診断は、養護教諭にとって一大イベントであり、学校にとっても大切な学校行事です。

しかしながら、同じ学校行事でも、運動会や卒業式のように目立つものではありません。

他にも、英語や算数に比べて保健教育は重要視されにくいなど、やりづらさを感じることもあるでしょう。

養護教諭がどれだけ一生懸命に取り組んでいても、わかってもらえないこともよくあります。

養護教諭の仕事は、地味で目立たない仕事がほとんどです。

そして地味で目立たない分、その大変さは他の先生からは気づかれにくいのです。

それでも、「縁の下の力持ち」として、子どもの心や体の健康を支えているのは、養護教諭です。

養護教諭には、見えない影の努力がたくさんあるのです。

養護教諭にとって大切なのは、強いメンタル

養護教諭があらゆる状況でうまく立ち回るには、強いメンタルが必要です。

養護教諭は何をするにも一人なので、すぐに相談できる相手がいない場合も少なくなく、やはり独りで受け止めなければなりません。

頑張っても評価されにくく、やるせなさを感じたり、モチベーションを保つことが難しかったりもします。

本当は傷つくことも多い養護教諭ですが、「これくらいなんてことない!」と思えるような、強いメンタルが必要です。

まとめ

敷き詰められた本
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