「養護教諭って、なぁに?」元保健室の先生が、9つのポイントを徹底解説!
もくじ
みなさんはじめまして!
元保健室の先生で、ほけんしつ.net管理人のぬんと申します。
このページを見ている方の中には、「保健室の先生になりたいけれど、情報が少なくて困っている…」という方も多いのではないでしょうか?
それもそのはず、学校に一人や二人の保健室の先生は、他の先生と比べて人口が少なため、情報を集めるのはなかなか難しいのが現実です。
そのため、保健室の先生がどんな存在であるか、イメージしづらい部分はたくさんあるかと思います。
私自身、インターネットでの情報収集に限界を感じたため、受験前に何度も大学に足を運び、情報収集しました。
このページでは、養護教諭になりたい人のために、公立小学校で保健室の先生として働いていた経験を交えながら、保健室の先生のなり方に加え、「実際のところ」や、魅力について、詳しく説明しています。
このページを読めば、養護教諭の姿をより具体的にイメージすることができ、養護教諭についての理解が、きっと深まるはずです。
たくさんの人に、保健室の先生に興味を持ってもらえたらいいなぁと思っていますので、わからないことがあれば、お問い合わせからいつでもご連絡ください。
夢を実現するためへの第一歩として、ぜひ、参考にしてくださいね。

ひとこと
Youtubeでも解説しているきりん♪
「ほけんしつどっとねっと」のチャンネル登録、よろしくお願いしますきりん♪
① 「保健室の先生」=養護教諭
みなさんが学校で「保健室の先生」、「保健の先生」と呼んでいる先生の正式名称は、「養護教諭」といいます。
「保健室の先生」と呼ばれるように、養護教諭は、保健室を拠点として仕事をします。
「養護」とは、子どもの心と体を守り、育てることです。
養護教諭は、医師や看護師、保健師、心理士ではなく、教員です。
公立学校で働く場合、養護教諭は教育公務員であり、地方公務員であります。
養護教諭の歴史は、1905年、目の感染症であるトラコーマが流行ったことをきっかけに、岐阜県の学校に配置された学校看護婦が始まりです。
学校教育はどんどん発展し、現代の養護教諭は、学校内の健康の専門家として、みなさんの心と体の健康を守っています。
担任の先生を、子どもたちの前に立ち、導く存在とするならば、養護教諭は、子どもたちの後ろに立ち、背中をそっと支える存在です。
養護教諭は、子どもや担任の先生、保護者の方のサポート役に回ることが多く、しばしば「縁の下の力持ち」と表現されます。
また、養護教諭は、英語ではそのまま「yogo teacher」と訳されます。
これは、海外では「学校看護師」はいますが、「養護教諭」は存在しないことがほとんどだからです。
実は、子どもたちの心と体をあらゆる方法でサポートする養護教諭は、海外でも注目されている、日本の独特な職業なんですよ。
養護教諭の職務に関連する法規・答申
参考として、養護教諭の職務に関連する法規・答申をまとめました。
詳しくは、文部科学省ホームページ「養護教諭の職務内容等について」をご覧ください。
養護教諭は、児童の養護をつかさどる。
学校教育法 第37条⑫ - 文部科学省
養護教諭は、専門的立場からすべての児童・生徒の保健及び環境衛生の実態を的確に把握し、疾病や情緒障害、体力、栄養に関する問題等、心身の健康に問題を持つ児童生徒の指導に当たり、また、健康な児童生徒についても健康の増進に関する指導のみならず、一般教員の行う日常の教育活動にも積極的に協力する役割を持つものである。
保健体育審議会答申(昭和47年) - 文部科学省
養護教諭は、児童生徒の身体的不調の背景に、いじめなどの心の健康問題がかかわっていること等のサインにいち早く気付くことのできる立場にあり、養護教諭のヘルスカウンセリング(健康相談活動)が一層重要な役割を持ってきている。養護教諭の行うヘルスカウンセリングは、養護教諭の職務の特質や保健室の機能を十分生かし、児童生徒の様々な訴えに対して、(中略)心や体の両面への対応を行う健康相談活動である。(中略)養護教諭については、現代的課題など近年の問題状況の変化に伴い、健康診断、保健指導、救急処置などの従来の職務に加えて、専門性と保健室の機能を最大限に生かして、心の健康問題にも対応した健康の保持増進を実践できる資質の向上を図る必要がある。
保健体育審議会答申(平成9年) - 文部科学省
② 養護教諭免許状
養護教諭になるには、教員免許状の一つである養護教諭免許状を取得する必要があります。
養護教諭免許状は、看護師免許や保健師免許、心理士資格とは異なり、基本的に互換性はありません。
養護教諭の中には、看護師や保健師、心理士などの資格を取得している方もいますが、公立の学校で養護教諭として働く場合は、必須ではありません。
養護教諭免許状の種類
養護教諭免許状には、次の3つの種類があります(上から順番に上位の免許状になります)。
- 養護教諭専修免許状(大学院卒業程度)
- 養護教諭一種免許状(大学卒業程度)
- 養護教諭二種免許状(短期大学卒業程度)
どの免許状を取得しても、仕事内容に違いはありません。
しかしながら、上位の免許状になるほど専門性が高いと評価され、給与が高い、教員採用試験に合格する可能性が高い、管理職になることができる、といったメリットがあります。
また、養護教諭二種免許状または養護教諭一種免許状を取得した場合、必要な期間在職し、必要科目を履修することにより、より上位の免許状の取得を目指すことができます。
養護教諭の専門性を高めるため、養護教諭二種免許状取得者に対し、上位である養護教諭一種免許状の取得を支援する自治体もあるようです。


ひとこと
私立学校で、養護教諭免許ではなく看護師免許を持っている人が保健室の先生として働いている場合があるけど、厳密にいうと、その人は養護教諭ではなく看護師さんだきりん♪
養護教諭免許状を取得できる大学・学部
養護教諭免許状を取得するためには、大学または短期大学、通信大学のいずれかで、必要な科目を履修する必要があります。
養護教諭免許状を取得することができる学部は、大きく分けて次の5つが挙げられます。
- 教育系
- 看護系
- 心理系
- 福祉系
- 健康・スポーツ系
また、養護教諭免許状は、通信大学でも取得することができるので、働きながら養護教諭を目指すことも可能です。
どの大学・学部で養護教諭免許状を取得しても、仕事内容や、教員採用試験に合格する可能性に、違いはありません。
自分のやりたいことや得意なことにあった大学や学部を選びましょう。
養護教諭の免許資格を取得できる大学、短期大学等は、文部科学省ホームページ「養護教諭の免許資格を取得することのできる大学」をご覧ください。
大学等によっては、必要な科目を履修することで、養護教諭免許状だけではなく、看護師や保健師、心理士、歯科衛生士など、複数の免許資格を取得することができる場合もあります。

ひとこと
「養護教諭になりたかったけど、ほかの大学・学部に進んじゃった…」と思ったそこのあなた!
あきらめるのはまだ早いきりん♪
大学によっては、3年次編入生を受け入れていることがあるきりん♪
管理人のぬんちゃんも、4年制の総合大学を卒業したあと、ほかの大学に編入学して、2年間で養護教諭一種免許状をとったそうだきりん♪
大丈夫きりん♪
③ 養護教諭の勤務
就職先
養護教諭の免許を取得していると、公立学校と私立学校のどちらでも働くことができます。
また、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の、すべての校種で働くことができます。
ただし、公立学校で働く場合は、自治体にもよりますが、必ずしも希望の校種で働くことができるというわけではありません。
雇用形態
養護教諭の雇用形態は、常勤と非常勤があり、正規採用と非正規採用があります。
給与・福利厚生
公立学校で働く場合、養護教諭のお給料や福利厚生は、他の先生と同じです。
給与や福利厚生は、自治体によって異なるので、詳しくは自治体の教育委員会のホームページをご覧ください。

ひとこと
養護教諭は、ほかの先生と就職先に違いがあるけど、ほかのことはほとんど同じだと思っていいきりん♪
④ 養護教諭の教員採用試験
教員採用試験とは、各自治体が年一回実施する、公立学校の正規採用の教員になるための試験です。
養護教諭になるためには、必ずしも教員採用試験に合格しなければならないというわけではありません。
私立学校で働く場合や、公立学校でも講師(臨時採用の教員)として働く場合は、教員採用試験を受験する必要はありません。
ただし、私立学校を志望する場合は、学校独自の採用試験が課せられる場合があります。
難易度
学校に一人や二人の養護教諭の教員採用試験は、採用人数が少なく、自然と倍率が高くなるため、他の先生と比べて、難易度が高いといわれています(自治体や年度によっては、数十倍を超えることも珍しくありません)。
しかし、チャンスは一度きりというわけではなく、不合格だったとしても、講師として働きながら、何度か受験して合格を目指す方も多くいます。
○○は、有利?不利?
よく、教員採用試験の合否について、「大学の偏差値は関係ありますか?」「看護師免許を持っているほうが、教員採用試験に合格しやすいですか?」「文系よりも理系の学部のほうが有利ですか?」といった質問をいただきます。
大学等で学んだ内容によって、考え方や物事へのアプローチの仕方に特色が出ますが、養護教諭になるために必要なのは養護教諭免許状であり、単純に点数が高かった人から採用されるので、基本的には、特定の大学や学部が、教員採用試験に有利になることはありません。
ただし、アピールポイントになるはずなので、偏差値の高い大学に進学したり、看護師免許等を取得することが無駄になることはありません。
また、教員採用試験の筆記試験では、解剖学や人体構造学といった専門知識や、一般教養の知識も必要なので、教員採用試験前に、理系分野の勉強をしなければなりません。
⑥ 養護教諭の仕事内容
養護教諭は、「けがや病気をしたときに保健室でみてくれる先生」というイメージをもっている人も多いのではないでしょうか?
あまり知られていませんが、養護教諭は、救急処置以外にも、健康診断や健康観察、委員会活動、事務作業など、実は他にもたくさんの仕事をしています。
養護教諭の仕事は非常に広範囲にわたり、その内容は、日によって、時期によって、学校によって、異なります。
また、同じ養護教諭でも、校種によって保健室に来室する理由が異なるため、それにともなって仕事内容は変わります。
たとえば、幼稚園や小学校では、けがや病気といった体のサポートが多いですが、中学校や高等学校では、心のサポートが多いです。
特別支援学校では、より専門的なケアが必要となります。
どの校種で働いても、心と体の健康を守るという点では、共通していて、そのときそのとき求められていることをするのが、養護教諭の仕事です。
養護教諭は、なんでも屋さんかもしれませんね。
⑦ 養護教諭の特徴
私は、養護教諭は「特別」な先生であると考えます。
「特別」であることは、決して悪い意味ではなく、子どもたちに必要なことです。
たくさんの特徴をもつ養護教諭だからこそできることに、やりがいを感じていました。
養護教諭のやりがい
子どもの心や体に触れる機会が多く、成長を感じられる
養護教諭は、救急処置や健康相談をはじめ、様々な機会を通じて、子どもたちの心と体に触れます。
体に触れるということは、本人に了承を得たうえで、絆創膏を貼ったり、包帯を巻いたり、「お腹が痛い」と言って来室した子どもを触診したりすることです。
養護教諭は、子どもの弱った姿を見る機会がどうしても多いのですが、その分、「先生、元気になったよ!」という言葉を聞くと、すごくうれしいものです。

ひとこと
1年生のとき、お母さんと離れるのが不安で、保健室に来て泣いてばかりいた子がいたきりん。
とっても心配だったけど、だんだん来室が減ってきて、2年生になるころには、すっかりお姉さんになっていたきりん!
その子が運動場で走り回って遊んでいる姿を見ると、とっても力強くて、成長を感じたきりん!
全校児童・生徒を対象とし、一人ひとりにあった支援をすることができる
養護教諭は、担任の先生になることはありません。
そのため、小学校であれば、1年生から6年生、中学校や高校であれば、1年生から3年生というように、すべての学年の子どもと関わります。
クラスを持たないことで、基本的には授業で子どもを評価することがなく、授業や休み時間といった時間割の境界線もありません。
子どもと一対一で関わることが多い養護教諭は、ゆっくりと時間をとり、柔軟に対応することで、一人ひとりにあった支援をすることができます。

ひとこと
うれしいことに、「保健室にいるとなんか落ち着く」と言ってくれる子が多いきりん♪
仕事の拠点は保健室であり、独自性を発揮することができる
養護教諭は「保健室の先生」と呼ばれることが多いように、養護教諭の仕事の拠点は保健室です。
養護教諭が特別な先生であるように、保健室は特別な空間です。
保健室は、休み時間や授業中など、時間を問わずいつでも利用することができ、学年やクラスを問わず、誰でも利用することができます。
また、保健室は、けがや病気をしたときにだけ利用するものではなく、カウンセリングを行うため、クールダウンをするため、シャワーを利用するためなど、様々な用途で利用されます。
保健室のレイアウトや運営の仕方は、養護教諭の考え方が強く反映されるので、保健室は養護教諭の分身ともいえるかもしれません。
自分の個性や強みといった独自性をいかして、自分だけの保健室を作ることができます。

ひとこと
きりりんは、保健室が子どもたちの居心地の良い場所になるように、オルゴール音楽を流したり、ぬいぐるみや絵本を置いたりして、工夫してるきりん♪
パソコンを使った作業やプログラミングが得意だから、資料づくりは任せてきりん♪
養護教諭のむずかしさ
「特別」な養護教諭が働くうえで大切なことは、ほかの先生との連携です。
養護教諭は一人で行動することが多く、すぐに相談できる人が周りにいないため、学校において孤独を感じやすい立場にあります。
学校で孤立してしまわないためにも、他の先生との日頃のコミュニケーションが大切です。
たとえば、養護教諭の判断で、子どもを保健室で休養させようと思っても、担任の先生の中には「保健室は甘えである」という考えを持っている先生もおられます。
これは、養護教諭の考え方が正しいといいたいわけでも、担任の先生の考え方が間違っているといいたいわけでもありません。
養護教諭や保健室が「特別」であるがゆえに、他の先生から理解を得にくいことということです。
また、健康診断は養護教諭にとって一大イベントであり、大切な学校行事ですが、入学式や運動会といったより大きな行事の前にはかすんでしまい、養護教諭が一生懸準備をしていても、その苦労を理解してもらえないこともあります。
他にも、英語や算数に比べて保健教育は重要視されにくいなど、やりづらさを感じることもあるでしょう。
養護教諭は「名もなき仕事」が多く、仕事内容はほかの先生から見てもわかりづらいことがあり、地味で目立たない仕事がほとんどです。
そのため、養護教諭が陰で大変な思いをしていても、その大変さは他の先生からは気づかれにくいのです。
それでも、これらの仕事はすべて必要なもので、「縁の下の力持ち」として、子どもの心や体の健康を支えているのは、養護教諭なのです。
しかしながら、これらは養護教諭のむずかしさであると同時に、養護教諭のおもしろさでもあります。
⑧ 養護教諭の専門性
私は、養護教諭は「あいまい」な先生であると考えます。
養護教諭免許状は、教育学部だけではなく、様々な学部で取得できることからもわかるように、教育学、看護学、心理学、福祉学、健康・スポーツ学が重なったところが、養護教諭の専門性といえます。
このように、ずらりと並んだ○○学を見ると、「養護教諭の専門性って、結局なんなの?」と感じてしまうかもしれません。
確かに、養護教諭の専門性を一言で表すことはできないかもしれませんが、むしろそのあいまいさこそが、養護教諭の専門性とも言えます。
養護教諭は、教育学的な視点だけではなく、看護学的な視点、心理学な視点、福祉学な視点、健康・スポーツ学な視点など、多角的な視点で子どもたちをとらえることができます。
これは、時代とともに変化する子どもたちと関わるときに、とても大切な視点です。
教育を土台としながら、養護教諭は子どもに対して様々なアプローチをします。
⑨ こんな人が、養護教諭に向いています
子どもにそっと寄り添うことが、養護教諭の役割です。
養護教諭に向いている人の特徴は、次の通りです。
- 子どもに寄り添い、受け止められる人
- 子どもの成長を根気強く見守ることができる人
- 子どもの小さな変化に気づくことができる人
- あらゆる状況に対応できる人
- 他の人と積極的に関わり、周りを巻き込んで行動できる人
養護教諭に求められる力は、包容力、傾聴力、共感力、継続力、観察力、傾聴力、柔軟性、判断力、計画力、協調性、発信力、リーダーシップ力などがあげられます。